さっくり要約紹介:『言葉にできるは武器になる』
生成AI、とっても便利ですよね。日常生活からビジネスシーンまで広く普及し、いまや多くの人があらゆる場面で利用しています。
中でも、ネット上の膨大な知見が最適化された「文章作成機能」は非常に強力です。簡易な文章のやり取りから専門的な詳述まで、ありとあらゆる文章をものの数秒で考えてくれます。最近はAIで書かれた書籍もちらほらと見かけるようになりましたね。
しかし、言葉の扱いがAIに外注されるほどに、私たちの「言葉にする力」が少しずつ下がっていくのではないかと思ったりもします。
今回は、そんな社会に生きる皆さんの一助となる、梅田悟志さんの著書『言葉にできるは武器になる』(2016,日本経済新聞出版社)のご紹介です。
響く言葉は内に宿る ~見過ごしがちな”内なる言葉”~
外に向かう言葉だけをどれだけ鍛えたところで、言葉の巧みさを得ることはできるかもしれないが、言葉の重さや深さを得ることはできない。
『言葉にできるは武器になる』 梅田悟志
外向きの言葉… 普段の生活で使用する一般的な「言葉」
内なる言葉 … 自分の内面から無意識に浮かび上がってくる言葉。抽象的
言葉には2種類あります。日常生活で使用する「外に向かう言葉」と、自分自身の内側から自然発生する「内なる言葉」。
内なる言葉は外に向かう言葉の源泉となります。内なる言葉が洗練され、幅と奥行きをもっているほどに、他者からの理解や共感・感動を得られる「外に向かう言葉」へと昇華されます。

何気なく浮かんだ言葉を、立ち止まって見つめてみましょう
多くの人は「外に向かう言葉」を上達させることに目が行きがちです。決して間違いではないのでしょうが、小さな井戸から多くの水をくみ上げることはできません。
「内なる言葉」ーー無意識に浮かんでくる言葉は、己が気づいていない自分の視点そのもの。自分の無意識を意識して拾い上げ、中身を広げ深めていく。それは、自分との対話とも言い換えることができます。
内なる言葉の磨き方 ~人は考えているようで思い出している~
内なる言葉を育てる3ステップ
- 内なる言葉をアウトプットする
- 内なる言葉に幅と奥行きを持たせる
- 内なる言葉をさらに深める
内なる言葉を育てるファーストステップは、ある課題や目的について、思い浮かぶことをひたすら書き出していくことです。それはもうひたすらに、思いつく限り書き出すのです。本書ではA4用紙1枚につき1文を書き出しています。内なる言葉は雑然としていて抽象的です。
まず「内なる言葉」を拡散・深化させるためのフレームをつくり、自分の脳の中に<考えるための余地・空白>を用意します。本書では「誰かに悩みを相談するシーン」を例に挙げています。
「人に話すことで悩みが解消された」という経験を持つ人は多いと思う。これはまさに頭の中に浮かぶ内なる言葉を外に出すことで、頭の中に考える余地や空間が生まれた状態であると言える。
『言葉にできるは武器になる』 梅田悟志

独り頭の中だけでこねくりまわしても、過去の経験や感情で溢れかえってしまい「あれっ、結局なにが考えたかったんだっけ?」と迷子になってしまいがちです
次に、内なる言葉に幅と奥行きをもたせていく作業です。「なぜ?」「それで?」「本当に?」と1枚1枚に問いかけ、必要があれば紙を増やし、思考の幅を拡張していきます。「もうこれ以上は広がらない…」というところまで終えたら、紙を特徴毎にグループ化したり、足りない要素を補っていきます。

たくさん書いたつもりでも、グループ毎に並べてみると全然考えられていないカテゴリが出てきたりしますよ
最後に、さらに踏み込んで言葉の解像度を上げる作業です。まったく逆の見地から物事を考える<逆転の発想>、違う視点や立場から考え直す<複眼思考>を駆使することで、無意識に形成された自分の中の常識から抜け出します。
たとえば「何でもできる完璧な人になりたい」と書いたなら…
「一つのことを極めた職人になるのはどうか」<逆転の発想>
「友人や家族、同僚だったらどう思うだろう」<複眼思考>

考えるほどに枠に囚われてしまうときってありますよね
そういうときは何日か寝かせてみるのも有効です
外へ向かう言葉への変換 ~日本語の型~
内なら言葉に具体性を持たせることができたら、外へ向かう言葉へ変換してみましょう。
- 日本語の型を活用する
- たとえる<比喩・擬人> 「あなたは私の太陽です」
- 繰り返す<反復> 「ありがとう。本当に、ありがとう」
- ギャップをつくる<対句> 「控えめに言って最高」
- 言い切る<断定> 「犬好きに悪い奴はいない」
- 感情をゆさぶる<呼びかけ>「立ち上がれ!自由のために」
他にも、さらに魅力ある言葉をつくるための一歩先の知見として
ある一人の人に向けて語り掛ける<ターゲティング>や新しい意味をつくりだす<意味の発明>などが紹介されています。

内なる言葉がくっきりと見えてさえいれば、馴染み深い方法だけでも意外といい文章がつくれてしまいそうですね
まとめ
いかがでしたか。
今回は梅田悟志さんの著書『言葉にできるは武器になる』のご紹介でした。
本書には、今回解説しきれなかった「内なる言葉を育てる具体的な流れ・方法」「外に向かう言葉につかえるコツや考え方・例文」などがまだまだ載っています。
もし興味をもった方はぜひ手にとってみてくださいね。


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